1,はじめに
私は、うつ病とセロトニンがキーワードの組み合わせとして挙げられているのを見て、この二つはどのように関係しているのだろうと興味を持ったのでキーワードとして選びました。後、最近よくうつという言葉を聞くがそれはどういった症状なのか、どんな状況でなるのか、どうして人はうつになるのか?と人の心理についても学んでみたいと思い、またセロトニンは生理学や生化学でよく耳にするのに、その実態を余り知らなかったので詳しく調べてみたいと思ったのも理由です。
2,選んだキーワード
うつ病 セロトニン
3、選んだ論文の概略
@うつ病とは?
抑うつ気分、悲哀、絶望感、不安、焦燥、苦悶感などがあり、体調がすぐれず、精神活動が抑制され、しばしば自殺企図・心気妄想を抱くなどの症状を呈する精神の病気であり原因不明である。躁うつ病のうつ病相の形をとるもの、周期性ないし単相性うつ病の型のものなどがある。うつ病は、一般的に正常な感情の期間に続いて起こる周期性経過をとる。感情の振幅が方向を変えないとき、単極性うつ病という。双極性うつ病とは、うつ状態と躁症発現の間を変動する。苦痛の重荷に活力を失っているうつ病だけでなく、うつ病患者の行動は強力に抑制されているものから、不安、動揺、罪悪感、自殺前の状況などいろいろ異なる。抑うつ状態はしばしば身体症状を伴い、患者は感情障害を身体疾患に投影する。老年期うつ病患者は拒食、拒薬、経鼻胃管の挿入困難、感染症を繰り返すなどをして、治療が難渋する。
Aセロトニンとは? セロトニンの構造式
セロトニンは、腸粘膜のクロム親和性細胞でL−トリプトファンから合成される。トリプトファンは夜に摂取すると眠りにつきやすい。セロトニンは、脳の神経伝達物質で、睡眠、情動、注意力、学習などに影響をもたらす。セロトニン(5−HT)含むニューロンは細胞体を脳幹の縫線核内にもち、視床下部、辺縁系、新皮質および脊髄に投射する。5-HT系はACTH,プロラクチン、オキシトシン、ADH,レニンの放出を促進することによって、心臓血管系に長時間影響を与える。視床下部へ向かう線維の側枝は脳幹に分岐し、気分に影響を与える。5−HTまたはそのアゴニストは多幸感をもたらす。逆に5−HTの分泌低下でうつ状態がもたらされる。幻覚誘発剤のリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)は、脳の5−HT2受容体に結合するセロトニン作動薬である。他にも、DMT,DOM、メスカリンなど5−HT2受容体に結合して作用する幻覚誘発剤がある。
Bセロトニンシグナルと食欲調節シグナル
情動と食行動は密接な関係を有している。例えば、不安・抑うつはしばしば過食を引き起こす。この情動と食行動に深く関わるセロトニン系に着目し、同受容体ノックアウトマウス作成を通してセロトニン5−HT2C受容体の摂食行動と身体活動の制御における役割についてや、5−HT系とレプチンやメラノコルチン、また自律神経系との関係も明らかにした。セロトニンは感情だけでなく食欲調節にも深く関与するモノアミンで、脳内セロトニン系は、不安、うつなどの感情と、摂食や身体活動など行動の制御に関与する。行動の制御は、セロトニン受容体の機能によって調節されている。セロトニン受容体は現在までに、7つのファミリーと14種のサブタイプが同定されている。
レプチンとは不足すると肥満となる蛋白質であるが、5−HT2c受容体KOマウスにレプチンを投与してもそのKOマウスの過食は抑制されることから、KOマウスの過食はレプチンの伝達障害を伴わないセロトニン伝達障害が原因となっている過食であるといえる。また、5−HT2c受容体KOマウスにおけるエネルギー消費系遺伝子発現に関しては、肥満KOマウスと野生群において白色肥満細胞におけるノルアドレナリンβ3受容体(β3―AR)の遺伝子発現が低下し、代償的にUCP−2の発現増加が認められたことに対し褐色脂肪細胞はβ3―ARとUCP−1の差が認められなかった。体温についても認められなかった。よって、5−HT2c受容体KOマウスにおける中年期発症の肥満は、交感神経系の白色肥満細胞におけるシグナル伝達障害による脂肪分解の低下はあるものの、褐色脂肪細胞による熱産生は傷害されてないことから、交感神経の不均等な障害が示唆される。
Cうつ病とセロトニンの関係
うつ病の研究では、環境要因としての経験したストレスライフなライフイベントの数が増えるほど、うつの症状や大うつ病のエピソ−ド、希死念慮、自殺企図の頻度が増える。また、顎感染症はストレスやうつ状態などの心身状態もその発症に関連しており、心身医学的にも注目されている。セロトニンがその発症に関連があるとされているが、詳細は不明であるが、顎感染症患者の血中セロトニン濃度を測定したところ、血中セロトニンは低い傾向にあった。(顎感染症ではセロトニントランスポーター遺伝子多型との関連は明らかにされている)中等度から軽症のうつ病には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方する。(扁桃体は急性の不安反応を特徴とするパニック障害の恐怖反応に関連し、SSRIの作用部位でもある)
Dセロトニンはどのようにしてうつ病に効くか?
抗うつ薬として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がある。現在我が国で発売されているSSRIは、パロキセチンとフルボキサミンである。抗うつ薬を投与→細胞体の自己受容体であるセロトニン1A受容体が刺激→ネガティブフィードバックがおこる→反復投与セロトニン1A受容体の脱感作神経発火の抑制が減弱→神経終末におけるセロトニン再取り込み阻害作用が十分機能抗うつ効果発揮。その結果1〜2週間でセロトニンが効いてくる。
E性格を規定する因子となりうるセロトニン
1996年11月には米国のLeschらが、17番染色体(17q11,1−q12)上のセロトニントランスポータ(5−HTT)蛋白をコードする遺伝子の多型がパーソナリティの神経質傾向と関連していることを報告した。神経週末における脳内神経伝達物質セロトニンの再取り込みを行う遺伝子を発現させるプロモーター領域の多型は、基本的に44塩基対が挿入されている1型か、挿入されていないs型である。動物実験では、s型のほうが働きが悪くシナプス間隙でのセロトニンの働きが不安定になりやすいことがわかっているが、Leschらの研究では、そうしたs型遺伝子を1つでも持つ人は1型遺伝子だけ持つ人と比べて不安(神経質)傾向が強かった。なお、遺伝子多型の分布は人種による差があり、それが社会構造にも影響を与えている影響がある。2002年にHaririらは、恐怖表情を見せたときの扁桃体の反応がs型を持つ人に強く出るという機能的MRI(fMRI)の所見を発表して5−HTT遺伝子多型と不安傾向の関係を再確認した。扁桃体は急性の不安反応を特徴とするパニック障害の恐怖反応に関連し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の作用部位でもある。
4,選んだ論文の内容と、ビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察
自殺死亡者は約三万人で死因の6位、平成10年に三万人を超え、その後は横ばいで高水準であり、特に45〜64歳の男性の自殺者が多く10年前に比べ各世代で増加しており、深刻な社会問題として受け止められている。また、パソコンなどの導入によるコンピュータリテラシーが必須になり、職場環境の大きな変化によってうつ病になるケースが多いことがわかった。人と接する機会も減りコミュニケーションが減ったためだという。主に30代の働き盛りの男性がうつ病になりやすい。それは、最近、リーダーシップも若い世代から任せられ、また正規社員に求められる技術水準が高度になってきており、大きな仕事から責任や圧迫感を感じる人が多くなったからだという。うつになると食事をしても味を感じることができなくなり、歯磨きすらできなくなる状態となってしまう。このうつ状態から抜けだし職場復帰を果たした男性は、家族の理解と支えが大きかったという。うつ病になり働けなくなった夫を妻は一生懸命介護をした。その男性は医師と面談をし、簡単な計算などをして徐々に体を慣らしていた。自分が思っているほど周りは気にしてないと割り切り、社員同士が自由に話せる機会を設ける事が大切であり、働きやすい職場、支えあう職場作りをすることが大切だ。
また、「健康日本21」では、うつ病は自殺の重要な要因であるとし、自殺予防にはうつ病を早期に発見し適切に治療することが重要であるとしている。
中高年の自殺においては1位がロシア、2位ハンガリー、3位日本である。この三か国は他の国と比べて自殺率が高い。よって人種による差がこのような点でも現れてきているといえる。日本も三位と高くまた、死因順位では6位なので自殺防止対策をしなければいけない。自殺予防には、カウンセリングは大事であり、うつ病を予防するために精神科医療を充実すべきだと思った。
Dまとめ
薬とは、分泌促進、分泌抑制、再吸収を抑制、レセプターをブロックなど人体に対して様々な作用を起こす。このことは、すべて人体に良いことをもたらしているとは限らない。よって、セロトニンのような薬はあくまでも補助的であり、周りの環境や自分自身を律すること、働きかけることが大切である。病気の治療には薬の効果を信頼することは大切であるが、一方、薬に頼らず病気を少しでも改善しようとする生活習慣や意欲が大切であると思われる。ストレスを溜めず、うまく発散できるようにし、またストレスも人生のスパイスだと割り切り毎日を元気に過ごすことがうつ病にならないための一番の策である。そのためにも、人とのかかわりを大切にし、自分自身の精神を安定させることが大事である。